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「古い家具を直す」という選択が広がらない理由と、変えていきたいこと

「壊れたから買い替える」——そう決断するまでに、どれくらい悩みましたか?

あるいは、ほとんど悩まなかったでしょうか。
「どうせ安かったし」「もう古いから」「修理に出すより新しいものを買った方が早い」。
そんな言葉が頭をよぎって、気づけば粗大ゴミに出していた、という経験は、現代の暮らしではけっして珍しいことではありません。

私たちは家具を販売しています。
だからこそ、正直に言わなければならないことがあります。

家具屋が「新しいものを買うより、直して使いましょう」と言うのは、一見すると商売に反することのように思えるかもしれません。
でも、私たちはそうは思っていません。
私たちがこの仕事をしているのは、家具をたくさん売ることが目的ではなく、お客様の暮らしを、少しでも豊かにしたいからです。
そのためには、安い家具を次々と提案するよりも、本当に良いものを一度手にしていただき、長く、大切に使っていただく方が、お客様にとっても、地球にとっても、ずっと意味のあることだと考えています。

日本では毎年、膨大な量の家具が廃棄されています。
その多くは「壊れたから」というより、「飽きたから」「引っ越したから」「もっと安いものが出たから」という理由で手放されています。
一方で、少し手を加えれば、まだ十分に使えるものが、その中にどれほど含まれているでしょうか。

この記事では、「古い家具を直す」という選択がなぜ日本社会に広がりにくいのか、その背景にある構造的な問題、文化的な変化、そして私たち家具屋としてできることを、できる限り誠実に掘り下げていきたいと思います。


1. 「修理より買い替えが安い」という価格の罠

家具の修理を考えたとき、多くの人がまず突き当たる壁が「費用」の問題です。

たとえば、座面がへたってきた椅子の張り替えを専門業者に依頼すると、椅子の種類や生地にもよりますが、1脚あたり1万円から3万円程度かかることがあります。
一方で、ホームセンターやインターネット通販を見れば、似たようなデザインの椅子が5,000円から1万円台で手に入ることも珍しくありません。
数字だけを見れば、「修理代を払うくらいなら、新しいものを買った方がいい」という判断は、一定の合理性があるように見えます。

しかし、この「比較」には大きな落とし穴があります。

修理を検討している椅子は、おそらく長年使ってきた、それなりに品質の高い家具です。
一方、1万円以下で買える椅子は、同じような耐久性を持っているでしょうか。
多くの場合、素材はMDF(中密度繊維板)や合板が主体で、接合部は金属のボルトやプラスチックのジョイントが使われています。
丁寧に使えば数年はもちますが、また同じように傷んで、また買い替えが必要になる——というサイクルが繰り返されます。

これを「買い替えコスト」として計算してみましょう。

仮に、質の良い椅子を3万円で買い、15年使ったとします。
途中で1回2万円の修理をしたとすれば、合計5万円で15年間、快適な椅子を使えたことになります。
一方、1万円の椅子を3〜4年で買い替え続けると、15年間で4〜5脚分、つまり4万〜5万円かかる計算になります。
これだけ見るとどちらも同じくらいのコストに見えますが、買い替えには粗大ゴミの処理費用や、買い替えのたびにかかる手間と時間も加わります。
もし椅子に合わせてテーブルも揃えていたら、もしかしたらテーブルの買い替えも発生するかもしれません。

長期的に見れば、修理しながら使い続ける方が、経済的にも合理的であることは少なくありません。

問題は、「目の前の出費」と「長期的なコスト」を比べることが、なかなか難しいということです。
人間は心理的に、今すぐかかる費用を大きく感じ、将来にわたる出費は軽く見積もる傾向があります。
修理代の2万円は「痛い出費」に感じられ、2年後の買い替えにかかる1万円は「まあいいか」と思ってしまう。
この心理的なバイアスが、修理より買い替えを選ばせる大きな要因のひとつになっています。

また、「安い家具が手軽に買える」という市場の現実も、修理文化を弱める方向に働いています。
家具の低価格化は、一見するとお客様にとって良いことのように見えますが、その裏には「安いから直さなくていい」「また安く買えばいい」という価値観の変化が伴います。
これは、家具だけでなく、衣類や家電などあらゆるものに共通する「使い捨て文化」の広がりと深く結びついています。

私たちが良質な家具を選んでお届けしたいと考える理由のひとつは、まさにここにあります。
最初から丈夫なものを使っていただくことが、結局は最もコストのかからない選択であり、ものを大切にするという文化の土台になると信じているからです。

2. 修理を頼める場所が、身近にない

仮に「直してみようか」と思ったとして、次に立ちはだかるのが「どこに頼めばいいかわからない」という問題です。

少し前の時代には、街に「家具屋さん」や「建具屋さん」「表具師」といった職人が身近にいて、壊れたものを持ち込めば直してもらえる場所がありました。
商店街の一角に、年配の職人が静かに作業をしているような店舗が、どの街にも一軒や二軒はあったものです。

しかし今、そのような職人店は急速に減っています。
後継者不足、設備の老朽化、そして何より「修理に来るお客様が少なくなった」という需要側の問題が重なって、廃業を余儀なくされた職人が全国に数多くいます。

インターネットで「椅子 張り替え 修理」と検索すれば、業者が出てきます。
しかし、地方在住の方が検索すると、対応業者が近くになかったり、出張費が別途かかったりして、結局コストがかさんでしまうことも少なくありません。
また、検索結果に出てくる業者が信頼できるのかどうか、素人には判断しにくいという問題もあります。
口コミやレビューを頼りにしても、家具修理の品質を文章で評価するのは難しく、実際に依頼してみるまで不安が残ります。

このような「修理インフラの空洞化」は、個人の意識の問題ではなく、社会構造の問題です。
直したくても直せない環境に置かれている人が多いということを忘れてはならないと思っています。

3. 「直せる家具」と「直せない家具」がある、という現実

実は、すべての家具が修理できるわけではありません。
これは、修理文化が広がりにくいもうひとつの理由です。
家具には大きく分けて、「直せる家具」と「構造的に修理が難しい家具」があります。
この違いは、素材と製法に大きく依存しています。

修理しやすい家具の特徴

無垢材で作られた家具は、修理に非常に適しています。
無垢材とは、合板や集成材ではなく、一枚の木材をそのまま使用したものです。
木材は傷がついても削って整えることができますし、割れやひびが入っても接着剤や木工用パテで補修できます。
脚がぐらついてきたなら、接合部を分解して組み直すことができますし、塗装が剥げても再塗装によって新品同様の美しさを取り戻せます。

また、部品ごとに交換できる構造になっている家具も、修理しやすい家具です。
たとえば、ほぞ(木材の凸部分)と穴を組み合わせた伝統的な木組みの家具は、部分的に壊れても、その部分だけを修理することが可能です。

さらに、椅子のように「張り地(ファブリックや革)」で座面や背もたれが覆われている家具は、その張り地を交換するだけで、見た目と座り心地を大幅に改善できます。
これが「椅子の張り替え」と呼ばれる修理で、家具修理の中でも比較的コストパフォーマンスが高い方法のひとつです。

修理が難しい家具の特徴

一方、修理が非常に難しいのが、MDF(中密度繊維板)や合板を主な素材とし、木工用ボンドや大量のステープル(金属の留め具)で組み立てられた家具です。
こういった家具は、製造時のコストを下げるために組み立てやすく設計されていますが、その分、分解や部品交換が難しい構造になっています。

たとえば、引き出しのレールが壊れた場合、引き出しを取り外して部品を交換しようとしても、引き出し自体がボンドとステープルで一体成型されていて、分解できないことがあります。
カラーボックスの棚板が湿気で膨らんで使えなくなった場合も、素材がMDFであれば削って調整することができません。

また、金属フレームと布を組み合わせたソファーなど、複数の素材が複雑に絡み合っている家具も、修理が難しいことがあります。
骨格の金属フレームを直すには溶接が必要になることもあり、専門的な設備と技術が必要です。

このように、「家具は修理できるのか」という問いの答えは、「その家具が何で、どのように作られているか」によって大きく異なります。

【商品のご紹介】椅子の張り替えセット

椅子の座面は、どんなに丈夫な椅子でも、毎日使えばいつかは傷んできます。
特にファブリックの張り地は、摩擦と汗と紫外線によって少しずつ劣化していきます。
そんなとき、椅子ごと捨てるのではなく、張り地だけを替えることで、まるで新しい椅子のように生まれ変わらせることができます。

当店では、ご自身で椅子の張り替えに挑戦していただけるよう、「椅子の張り替えセット」をご用意しています。
生地、フォーム(クッション材)、必要な道具がセットになっており、家具修理の経験がない方でも、説明書や動画に沿って作業していただければ、一般的な椅子の張り替えが可能です。

椅子の張り替え セット レザー 合皮 無地 【4cm厚】【4脚分】
椅子の張り替え セット 布 無地 【4cm厚】【4脚分】キャンバス
いすはりーず ワイドサイズ/ 椅子の張り替え ウレタンセット【5cm厚】【4脚分】※表地なし・中材のみ

ご自分で張り替えることで得られるのは、コストの節約だけではありません。
自分の手で家具を蘇らせる達成感、そして「直して使う」という選択を自分でしたという充実感は、市販の新しい椅子を買うだけでは得られない体験です。

「自分でやるのは難しそう」という方には、プロの手で行う張り替え修理もお承りしていますので、お気軽にご相談ください。

座面を送っていただくだけで、プロが新品同様に生まれ変わらせます!

4. 「捨てることへの慣れ」が、修理を遠ざける

少し視野を広げて、現代社会のものとの向き合い方について考えてみたいと思います。

現代の日本では、ものを捨てることへのハードルが、かつてよりもずいぶん低くなりました。
粗大ゴミの収集は多くの自治体で整備されており、フリマアプリを使えば不要なものを簡単に手放せます。
断捨離や「ミニマリスト」というライフスタイルへの関心も高まり、「持ちすぎない」「減らす」ことがひとつの美徳のようになっている時代でもあります。

「ものを減らすこと」自体は、決して悪いことではありません。
本当に必要なものを選び取り、それを大切に使うという姿勢は、むしろ推奨されるべきことです。
しかし、問題は「不要になったから捨てる」ではなく、「少し壊れたから捨てる」「少し古くなったから捨てる」という感覚で、まだ使えるものが手放されているケースが増えていることです。

家具の廃棄量に関するデータを見ると、その規模の大きさに驚かされます。
環境省の調べによれば、家庭から排出される粗大ゴミの中で、家具類は常に上位を占めており、年間に廃棄される家具の量は推計で数百万点にのぼるとも言われています。
その多くは、製品としての寿命を迎えていたわけではなく、「その家庭での役割を終えた」だけのものです。

「捨てることへの慣れ」は、「直すという発想が生まれる前に、捨てる選択をしてしまう」という習慣を作り出しています。
壊れた椅子を前にして、「修理できるかな」「どこに頼めばいいかな」と考えるより前に、「粗大ゴミに出せばいいか」という結論が先に来てしまう。

これは怠慢ではなく、社会が作り上げた「捨てやすい環境」の産物です。
だからこそ、私たちは「直す選択肢」を当たり前に提示できる場所でありたいと思っています。
捨てる前に、一度相談してみてください——そういう看板を、私たちは目に見えない形でずっと掲げてきました。

5. 愛着が育ちにくい家具が、修理の意欲を奪う

「なぜ直してまで使いたいと思わないのか」という問いに対して、もうひとつの答えが見えてきます。
それは、「その家具に、愛着がないから」という理由です。

愛着というのは、時間と記憶と体験によって育まれるものです。
長く使ってきた椅子には、座った回数の分だけ記憶が刻まれています。
家族で囲んだ食卓、深夜まで続けた作業、友人と語り合った時間——そういった記憶と結びついた家具は、少々傷んできても「直して使いたい」という気持ちが自然に生まれてきます。

一方、「とりあえず安かったから買った」という家具には、それほどの記憶が刻まれにくいものです。
別に特別なものでもないし、壊れたとしても「仕方ない」という感覚になりやすい。値段が安いほど、その傾向は強まります。

これは心理学でも研究されている現象で、「エンダウメント効果(保有効果)」と呼ばれるものに近い感覚です。
自分が所有しているものには、客観的な価格より高い価値を感じやすい——という人間の傾向があります。
しかし、その傾向は「大切にしている」と感じているものに対してより強く働き、「どうせ安物だから」という意識があると、保有していても特別な思い入れは生まれにくいのです。

良い家具を選ぶことには、機能的な理由だけでなく、心理的な理由もあります。
最初から「良いものを買った」という満足感と自覚があると、その家具を大切にしようという意識が生まれ、傷んだときに修理して使おうという発想にもつながりやすい。

私たちが「長く使える良い家具」にこだわる理由のひとつは、このサイクルにあります。
良い家具→愛着が育つ→大切に使う→傷んでも直す→さらに愛着が深まる。
このサイクルを、できるだけ多くのお客様と一緒に作っていきたいと思っています。

「買ってよかった」と思える家具との出会いが、暮らしの質を長期にわたって高めてくれる。
それが、「家具でQOLを上げる」ということの本質です。

6. 「直す文化」が失われていった歴史的な背景

現代人が修理を選ばなくなったのは、決して今に始まったことではありません。
日本社会においてものを修理して使う文化が薄れていったのには、歴史的な背景があります。

戦後の高度経済成長期、日本は「大量生産・大量消費」の時代に入りました。
工場でつくられた安価な製品が次々と市場に出回り、「新しいものを買う」ことが豊かさの象徴とされた時代です。
家庭に冷蔵庫・洗濯機・テレビが普及し、「三種の神器」と呼ばれたこれらの家電は、修理しながら使い続けるより、新しいモデルに買い替える方が「進歩的」とみなされました。

この価値観は、そのまま家具にも波及しました。
戦前は大工や建具師が作った家具を大切に使い続けるのが当たり前だった日本の家庭も、経済成長とともに「家具も消耗品」という感覚に近づいていきました。

1970〜80年代には、家具の大型量販店が全国に広がり、規格化・低価格化が加速しました。
さらに2000年代以降は、北欧系のライフスタイルブランドの台頭により、「おしゃれで安い家具を気軽に買う」というスタイルが若年層を中心に広まりました。
こうした変化の中で、「職人に家具を直してもらう」という文化は、意識の端に追いやられていきました。

しかし、近年は少しずつ風向きが変わっています。
SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりを背景に、「サステナブルな消費」という考え方が浸透し始めています。
若い世代を中心に、ヴィンテージ家具や古道具への関心が再燃しており、修理して長く使うことを「かっこいい」「賢い」と感じる人が増えています。

フランスでは2021年に「修理補助金制度(ボーナス・レパラビリテ)」が導入され、電化製品や衣類、靴などの修理費用の一部を政府が補助する取り組みが始まりました。
こうした制度は、日本でも将来的に導入される可能性があると専門家は見ています。

7. 「安く買って、また買う」より「良いものを長く」という考え方

家具の選び方について、もう少し具体的に掘り下げてみましょう。

「良い家具」とはどういう家具でしょうか。
値段が高ければ良いのか、ブランド名があれば良いのかというと、必ずしもそうではありません。
私たちが考える「良い家具」の条件は、大きく三つあります。

① 素材の良さ

先にも触れましたが、無垢材や高品質の天然木を使用した家具は、長期的な耐久性が高く、修理にも対応しやすいです。
無垢材は、表面に傷がついても研磨して整えることができ、木目の美しさは時間が経つほどに深まっていきます。
これは「エイジング(経年変化)」と呼ばれ、無垢材家具ならではの魅力です。

一方、表面に木目柄のプリントシートを貼ったMDF家具は、製造直後は美しく見えますが、年月とともにシートが剥がれてきたり、湿気でMDFが膨張したりすることがあります。
「木目があるから木の家具だと思っていた」という誤解は意外と多く、素材を確認せずに購入してしまうことがあります。

② 構造の確かさ

家具の寿命を決めるのは、素材だけでなく、構造の確かさでもあります。
木材同士をほぞ組みや蟻組みといった伝統的な木工技法で組み合わせた家具は、金物やボルトに頼らず強度を保てる構造になっており、長年使っても接合部がゆるみにくいのが特徴です。

また、引き出しの底板が薄すぎる家具は、重いものを入れると底が抜けることがあります。
棚板の厚みが十分でなければ、本や食器の重さで棚板が反ってきます。
こういった「使ってみてわかる問題」が少ない家具ほど、「良い家具」と言えます。

③ 修理・メンテナンスのしやすさ

三つ目の条件が、修理やメンテナンスへの対応しやすさです。
部品を取り寄せられるか、張り替えが可能な構造になっているか、塗装の塗り直しが可能か——こういった観点で家具を選ぶ人は、残念ながらまだ少数派です。

しかし、これからの時代、修理のしやすさは家具を選ぶ重要な基準のひとつになるべきだと私たちは考えています。
「壊れたら直せる」という安心感があってこそ、長く大切に使う気持ちが育まれます。

【商品のご紹介】当店のオリジナル国産家具

「最初から壊れにくいものを選ぶ」という考え方を体現したのが、当店のオリジナル家具シリーズです。

国内の熟練した職人が、吟味した素材を使って作り上げたこれらの家具は、量産品にはない「堅牢さ」と「美しさ」を備えています。
接合部は伝統的な木工技法を用いており、長年使っても構造的な強さが保たれます。
また、ご要望に応じて修理・メンテナンスにも対応できる設計になっているため、「一生もの」という言葉を実感していただけると思っています。

国産家具の強みは、単に品質の高さだけではありません。
日本の気候(特に高温多湿の夏と乾燥した冬)に対応した素材選びや乾燥処理が施されており、海外製品と比べて狂いが生じにくいという実用的なメリットもあります。

「少し高くても、長く使える方を選びたい」——そう思っていただけるお客様に、ぜひ手にとっていただきたい家具です。

ライティングデスク アルダー材 幅89cm デスク + 上置 セット May
ライティングデスク アルダー材 幅70cm Pure
すのこベッド 杉 シングル 敷ふとん用高さ40cm
幅80cm 6段 Mori ハイチェスト 完成品
こたつ テーブル 幅120cm KAI
ライティングビューロー パイン材 幅80cm デスク + 上置 セット OLV-PSL

8. 修理が生む、暮らしの「物語」

少し話の視点を変えて、修理された家具が持つ、独特の価値についてお話しさせてください。

日本には「金継ぎ(きんつぎ)」という伝統的な修復技法があります。
割れたり欠けたりした陶磁器を、漆と金粉を使って修復するもので、割れた跡をあえて隠さず、金色の線として美しく見せる技法です。
「欠けたから捨てる」のではなく、「欠けた跡をも美しさとして昇華させる」という発想は、日本の美意識の中に深く根ざしています。

この考え方を家具に置き換えてみると、どうでしょう。

使い込んで色が変わったテーブルの天板には、家族の記憶が染み込んでいます。
傷のついたソファーの肘かけには、長年の習慣と日常の体温が宿っています。
修理した椅子の座面には、「直して使い続けた」という選択の証が刻まれています。

新しいものにはない、こういった「時間の積み重ね」こそが、長く使われた家具の本当の価値だと思います。

家具は、生活の舞台装置です。
毎日の暮らしの中で、家具はただ機能を果たすだけでなく、その場の雰囲気をつくり、住む人の個性を映し出し、家族の記憶を蓄積していきます。
代々受け継がれた食器棚、祖父母から譲り受けた文机、結婚のときに揃えた椅子——そういったものへの思い入れは、家具がただの「道具」ではなく「暮らしの一部」であることを教えてくれます。

修理というのは、そういった「家具との関係性」を断ち切らずに続けていく行為でもあります。

ヨーロッパでは、アンティーク家具を代々受け継ぐ文化が広く根付いています。
100年前に作られた椅子が、修理を繰り返しながら現役で使われているということが珍しくありません。
それは単なる節約ではなく、「ものとの関係を大切にする」という文化的な姿勢の表れです。

日本にも、そういった文化はかつてありました。
「先祖から受け継いだ箪笥(たんす)」「親から譲られた食卓」——そういったものへの誇りが、日常の中に自然に存在していた時代がありました。

時代とともに変わったことは多くありますが、ものを大切にする心の豊かさは、変わらずに受け継いでいきたいものだと私たちは思っています。

9. サステナビリティという視点から見た家具の修理

近年、「サステナビリティ(持続可能性)」という言葉が、ビジネスや消費行動の様々な場面で使われるようになりました。
環境問題への意識が高まる中で、「ものを大切に使う」という価値観は、個人の選択を超えて、社会全体の課題として語られるようになっています。

家具の廃棄は、環境に対してどのような影響を与えているのでしょうか。

まず、廃棄された家具の多くは、焼却処分または埋め立て処分されます。
木材部分は燃焼させることができますが、塗料や接着剤、金属部品などが含まれる家具を燃やすことで、有害物質が発生する可能性があります。
また、埋め立て地に埋めた家具は、長期間にわたって土壌に影響を与えることもあります。

次に、家具を製造するためには、木材の伐採、運搬、加工、塗装、輸送といった各段階でエネルギーと資源が消費されます。
「捨てて、また新しいものを作る」というサイクルを繰り返すことは、それだけ多くの資源とエネルギーが消費され続けることを意味します。

「家具を修理して長く使う」という選択は、こういった資源消費と廃棄問題の両方に対して、具体的な貢献ができる行動です。
修理に使う素材(張り替えの生地、接着剤、塗料など)は、新品の家具を製造するために必要な資源と比べると、はるかに少量です。

家具のライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から見ると、一般的に製品の環境負荷の多くは製造段階に集中しています。
つまり、製造済みの家具を長く使い続けることは、新しい家具を製造する際の環境負荷を削減することと同義です。

また、修理という産業自体が、地域の経済や雇用に貢献するという側面もあります。
修理職人や専門業者が地域で活躍できれば、物流コストや海外生産に頼らない、地域循環型の経済の仕組みが生まれます。

「サステナブルな家具選び」という観点から、消費者ができる具体的な行動は次のようなものです。

まず、購入時に「長く使えるか」「修理できるか」という視点を持つこと。
次に、傷んだ家具をすぐに捨てるのではなく、修理の可否をまず調べること。
そして、可能であれば地域の職人や専門店に修理を依頼すること。

これらは、特別な努力や犠牲を必要とするものではありません。
少し立ち止まって考える習慣を持つだけで、家具との関係は大きく変わります。

良い家具を適切にメンテナンスしながら長く使うことは、環境のためであり、お客様自身の暮らしの豊かさのためでもあります。

10. 家具屋として、私たちが大切にしていること

私たちがこの仕事を続けているのは、「家具を売ること」が目的ではありません。
お客様の暮らしに寄り添い、生活の質を少しでも高めるお手伝いをすること——それが、私たちがこの仕事に携わる理由です。

一枚の板が、職人の手を経て家具になり、それがお客様の家に届き、毎日の暮らしの中で使われていく。
その一連の過程に、私たちは深い喜びと責任を感じています。

だからこそ、売りっぱなしにしたくないと思っています。

家具を販売した後も、「使い心地はどうですか」「困ったことはありませんか」という関係を続けていきたい。
傷んできたら相談に来ていただき、できる限り長く使い続けられるよう、ともに考えたい。

そのために、私たちが取り組んでいることがあります。

ひとつは、長く使えることを前提にした家具の品揃えです。
安価で見た目だけが整った家具ではなく、素材と構造がしっかりした家具を選んでお届けするために、仕入れの段階から丁寧に吟味しています。

もうひとつは、修理・メンテナンスの相談窓口を設けていることです。
「これ、直せますか?」という問い合わせを、私たちは歓迎しています。
お断りしなければならないケースもありますが、まず見てみることから始めています。
できることとできないことを正直にお伝えした上で、最善の方法を一緒に考えます。

そして、「家具のある暮らし」についての情報を発信し続けることも、私たちが大切にしていることのひとつです。
お手入れの方法、長持ちさせるコツ、修理の参考情報——こういった知識は、家具を販売する立場だからこそ伝えられることがあると思っています。

家具屋という立場は、ものを売るだけの立場ではなく、「ものとの良い付き合い方」を提案できる立場でもある。
そう信じて、これからも誠実に仕事を続けていきたいと思っています。

11. まとめ:「古い家具を直す」という選択を、もっと身近に

家具を修理して長く使うことが当たり前にならない背景には、価格の問題、修理インフラの不足、素材と構造の違い、捨てることへの慣れ、愛着の育ちにくさ、そして高度成長期に形成された「新しいものを買う」という価値観——さまざまな要因が複雑に絡み合っていることを見てきました。

これらの問題は、一朝一夕に解決するものではありません。
しかし、一人ひとりが「壊れたら、まず直せるか考えてみる」という小さな習慣を持つことで、少しずつ変わっていける問題でもあります。

私たちは、その「小さな習慣」の入り口になれる場所でありたいと思っています。

椅子がへたってきた、座面が傷んできた、引き出しがガタつく、塗装が剥げてきた——そういったお悩みを、ぜひ一度、私たちに話しかけてみてください。

当店では、家具の修理・修繕のご相談を承っています。
お持ち込みいただいた家具の状態を直接確認した上で、修理が可能かどうか、費用の目安はどのくらいか、どのような方法が最適かを、丁寧にご説明します。
もちろん、相談だけでも構いません。
「これ、直せますか?」という一言から、新しい可能性が生まれることも多いです。

捨てる前に、ぜひ一度ご相談を。
あなたの家具に、まだ続きがあるかもしれません。


◆ 岡山県和気町で家具の販売・修理ならbigmoriesへ。

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