座った瞬間に背筋が伸びる椅子の話|天使の椅子がなぜ姿勢を変えるのか


座った瞬間に背筋が伸びる椅子の話|天使の椅子がなぜ姿勢を変えるのか


「肩こりがひどくて、良いオフィスチェアを探しているんですが……」
そう言って来店されたお客さまに、私たちはいつも少し迷います。
機能充実のオフィスチェアをご案内すべきか。

でも、そのとき頭の中にふっと浮かぶのが、店の片隅にひっそり置かれたあの椅子のことです。
「よろしければ、こちらにも一度座ってみてください」

そうお声がけすると、お客さまは少し首をかしげながらも腰を下ろします。
するとたいてい、ほんの数秒後に同じことが起きます。
「……あれ?なんか、背筋がシャンとなりますね。なんでですか?」
驚いた顔でこちらを見る。
肩こりの話をしていたのに、気づけば姿勢の話になっている。
その瞬間がいつも好きで、私たちがこの椅子を置き続けている理由のひとつになっています。

この椅子の名前は「天使の椅子」。
静岡の家具工房「すまうと」が生み出した、山桜の無垢材でつくられたスツールです。
背もたれも、アームレストも、クッションも、ランバーサポートもありません。
一見するとシンプルすぎるほどシンプルな椅子です。
でも座ると、何かが変わる。

それがどういう仕組みなのか、なぜそういう椅子が生まれたのか、この記事でじっくりお伝えしたいと思います。


▼目次


1.椅子と姿勢の、意外な関係
「良い姿勢」のイメージが、実は間違っているかもしれない
骨盤が倒れると、何が起きるか
西洋から来た椅子と、日本人の体

2.天使の椅子が姿勢を変える理由
座禅の僧侶から得たヒント
坐骨で座るということ
高さは1センチ刻みで選べる
プロの音楽家にも選ばれている

3.素材へのこだわり——化学物質ゼロという選択
木製家具なのに「天然素材」とは言えない場合がある
山桜という素材
蜜蝋と亜麻仁油の塗装
接着剤も天然素材から
ホルムアルデヒドが出ない、ということ

4.正直に伝えたいこと——慣れるまでの話
最初は少し辛く感じることがある
「合う人」と「合いにくい人」
慣れた先にあるもの

5.まとめ

1.「良い姿勢」のイメージが、実は間違っているかもしれない

「良い姿勢」のイメージが、実は間違っているかもしれない

「姿勢を正しなさい」と言われると、多くの人は反射的に背筋をぴんと伸ばし、肩を引き、顎を引くような動作をします。
でも正直なところ、その姿勢、長続きしませんよね。
数分後にはまた丸まっている。
気合いを入れて直した姿勢は、気合いが抜けた瞬間に崩れる。

天使の椅子を手がけるデザイナー兼構造エンジニアは、このことについてこんなふうに語っています。
「”いい姿勢”というと”頑張って座る緊張感のある辛い姿勢”をイメージするかもしれませんが、本来、いい姿勢というのは気合いを入れて頑張ってとるものではなく、骨盤が立ちやすい仕組みによって自然と促されるのが理想だと考えています」

姿勢とは意志の力で保つものではなく、体の構造が自然にそうなるように導かれるものだ——という発想の転換です。
そしてその「導く仕組み」を椅子に込めることができれば、頑張らなくても姿勢が整う。
それが天使の椅子の出発点にある考え方です。

「木の香り」「現代の工学」「伝統の技」が織り成す、心地よい家具
天使の椅子 山桜
肩こり、腰痛対策に。体が自然と正しい姿勢になる椅子。
天使の椅子 杉

骨盤が倒れると、何が起きるか

人間の背骨は、真横から見るとゆるやかなS字型のカーブを描いています。
このカーブが正しく保たれているとき、頭の重さ(成人で約5〜6kg)が首や肩に余計な負荷をかけることなく、背骨全体で支えられます。
ところが、骨盤が後ろに倒れる「骨盤後傾」の状態になると、このS字カーブが崩れてC字型に近づきます。
すると頭の重さが首や肩の筋肉でダイレクトに支えなければならなくなる。
これが肩こりの大きな原因のひとつです。
腰椎(腰の骨)も本来あるべき前弯(ぜんわん)を失うため、慢性的な腰への負担にもつながります。

では、なぜ椅子に座ると骨盤が後傾しやすいのでしょうか。
多くの椅子は座面が水平か、やや後ろに傾いています。
そこに腰を下ろすと、重力と座面の角度に引っ張られる形で、骨盤は自然と後ろに倒れやすくなります。
背もたれに寄りかかれば、さらにその傾向は強まります。

現代の椅子の多くは「背もたれに寄りかかって休む」ための設計を兼ねているため、これはある意味必然です。
問題は、仕事や勉強など集中して作業をしなければならない場面でも、私たちは同じような椅子を使い続けているということです。
休息と集中を同じ椅子でこなそうとしている——それ自体に、そもそも無理があるのかもしれません。

西洋から来た椅子と、日本人の体

もうひとつ、見落とされがちな視点があります。
椅子という道具が、もともと西洋で生まれたものだという事実です。

ヨーロッパの人々と日本人では、体格や骨格の特徴が異なります。
股関節や骨盤まわりの柔軟性、脚の長さと胴体のバランスなどに差があることが知られています。

すまうとのデザイナーはこの点についても率直に語っています。
「そもそも椅子というのは西洋からきた道具です。大きさも骨格も筋力の付き方も違う日本人に、そのままの形で合うわけがありませんが、西洋人の体に合う形で輸入され、そのまま日本で作られるようになったため、日本人の体に合わないものが当たり前のように使われてきました」

多くの日本人が腰痛や肩こりに悩んでいる背景には、椅子というプロダクトそのものへの問い直しが必要なのかもしれない——そう考えると、椅子選びの視点が少し変わってきます。

2.天使の椅子が姿勢を変える理由

座禅の僧侶から得たヒント

すまうとのデザイナーが椅子づくりに大きな転機を迎えたのは、座禅を組む僧侶の姿を見たときのことでした。
座禅の場では、僧侶たちは長時間、驚くほど美しい姿勢を保ちながら座り続けます。
あの姿勢は、ただ精神的な修行によってのみ培われたものだろうか——そう思っていたデザイナーの目に、あることが映りました。
僧侶たちが、座布団をお尻の下に半分だけ入れて座っていたのです。

この「半座布団」の使い方には理があります。
お尻の後ろ半分だけを高くすることで、骨盤が前に傾き、坐骨(ざこつ)で体重を支える姿勢が促されます。
坐骨とはお尻の骨の中でも一番下にある、左右2つの突起した骨のことです。
ここで座面をしっかり押さえるような形で座ると、骨盤が立ちやすくなり、自然とS字カーブが生まれやすくなるのです。

「これを椅子の形として実現できないか」——整形外科の先生や人間工学の専門家とも協働しながら試行錯誤を重ねた末に生まれたのが、天使の椅子の設計思想でした。

坐骨で座るということ

天使の椅子の座面は、一見するとシンプルな板状ですが、その角度と形状に工夫があります。
座面の前部が適切な高さに設定され、坐骨で体重を受け止めるように促す設計です。
骨盤をぐっと持ち上げるイメージ、と表現すればわかりやすいかもしれません。

この「坐骨で座る」感覚は、最初は少し不思議に感じるかもしれません。
多くの人はお尻全体で座ることに慣れているため、坐骨でぐっと押さえる感覚が新鮮に感じられます。
でも、その姿勢がとれた瞬間——背筋が、自然と伸びるのです。

当店では実際にお客さまに座っていただき、横から写真を撮って見比べていただくことがあります。
一般的な椅子に座ったときと天使の椅子に座ったときで、背骨の形が明らかに違います。
天使の椅子に座ったときのほうが、背中がまっすぐに近い状態になっていることが、写真を見ると一目でわかります。
当の本人は「頑張って背中を伸ばしている」感覚はないのに、です。

座ってくださったお客さまからよくいただく感想は「なんか楽なんですよね」というものです。
姿勢が良くなっているのに、無理して伸ばしている感じがない。
気合いで保っている感じがない。
それがこの椅子の、最も核心的な特徴だと思います。

天使の椅子商品ページから抜粋。

高さは1センチ刻みで選べる

天使の椅子には、もうひとつ大切な特徴があります。
座面の高さを1センチ刻みで選べることです。
これは「チェアーフィッティング」という考え方に基づいています。

靴や服を体に合わせて選ぶように、椅子も体に合わせてサイズを選ぶべきだという発想です。
目安は「ひざ下の長さにプラス約3cm」。
椅子に座ったとき、足の裏がしっかり床につき、膝が直角かやや開いた角度になる高さが理想とされています。

自分のひざ下の長さを測ってみたことのある方は、意外と少ないのではないでしょうか。
でも、それだけで椅子選びの精度が大きく変わります。
天使の椅子はその計測と選択を丁寧にサポートしてくれる椅子です。

プロの音楽家にも選ばれている

天使の椅子は、ギタリストなど音楽家の方々にも愛用されています。
楽器の演奏中は長時間、体の特定の部位に負荷がかかり続ける姿勢をとります。
その状態で骨盤が後傾して背筋が丸まると、演奏への影響だけでなく体へのダメージも大きくなります。
プロの音楽家が姿勢や体の使い方に敏感なのは当然で、天使の椅子の「骨盤が立ちやすい」という特性が高く評価されています。

日常で使う椅子として、プロのアーティストからも選ばれている——それはひとつの信頼の証だと感じています。

3.素材へのこだわり——化学物質ゼロという選択

木製家具なのに「天然素材」とは言えない場合がある

「天然木使用」「木製家具」という言葉を見ると、なんとなく体に優しそうなイメージがあります。
でも実際のところ、木材を使っているからといって、必ずしも化学物質から自由であるわけではありません。

家具には木材の接合部に接着剤が使われます。
また表面には塗料が塗られることがほとんどです。
接着剤の多くにはホルムアルデヒドをはじめとする揮発性有機化合物が含まれ、一般的なウレタン塗装はプラスチックの被膜を木の表面につくるものです。
化学塗料を使った家具は、手で触れる部分はすべてプラスチックの感触になります。

見た目は天然木でも、触れているのはプラスチック——。
それが現代の「木製家具」の多くの現実です。
すまうとはこの現実に「ちょっと待ったをかけたい」と考え、接着剤も塗料も天然素材のみを使う家具づくりに取り組んでいます。

山桜という素材

天使の椅子の本体は、山桜(やまざくら)の国産無垢材で作られています。
山桜は日本の山野に自生する桜の一種です。
観賞用として知られるソメイヨシノとは異なり、木材としての特性に優れています。
硬さがあり、しっかりとした強度を持つこと。
細かく均質な木目が美しいこと。
経年変化によって深みのある色合いに育っていくこと——これらが家具材としての山桜の魅力です。

無垢材ということは、集成材(小さな木片を接着剤で貼り合わせた材)ではないということです。
一本の木から取り出した材を最小限の加工で使うため、素材そのものの質感と強度がそのまま椅子に宿ります。

蜜蝋と亜麻仁油の塗装

天使の椅子の表面仕上げには、蜜蝋(みつろう)と亜麻仁油(あまにゆ)が使われています。
蜜蝋はミツバチが巣をつくるときに分泌するロウ成分で、養蜂場から直接仕入れたものを使用しています。
亜麻仁油は亜麻の種から圧搾した植物油です。
これら2つを混ぜてつくった天然の塗料で、木の表面を仕上げます。

この仕上げの最大の特徴は、木そのものの質感が手に伝わってくることです。
化学塗料のように表面を膜で覆うのではなく、木の内部にオイルが浸透するため、触れると木の肌がそのまま感じられます。
また木が本来持っている調湿機能を損なわず、経年変化によって少しずつ味わいが増していきます。

接着剤も天然素材から

すまうとでは接着剤にも天然素材のものを選んでいます。
使用するのはたんぱく糊とでんぷん糊です。
たんぱく糊は牛乳に含まれるたんぱく質を取り出したもの、でんぷん糊はお米などを由来とした糊で、どちらもホルムアルデヒドを含みません。

第三者機関による強度試験では、でんぷん糊は一般的な木工用接着剤と同等の強度、たんぱく糊はそれ以上の強度が出るという結果が出ています。
天然素材だから弱い、というわけではないのです。
衝撃に対しては化学系接着剤より弱い面がありますが、すまうとは「弱い部分は構造的に補う」というアプローチをとっています。
接着面積を増やしたり、クサビを入れたりして構造的に補うことで、天然接着剤のデメリットをカバーしているのです。

ホルムアルデヒドが出ない、ということ

F☆☆☆☆(フォースター)という規格をご存じでしょうか。
ホルムアルデヒドの放散量に関する最高ランクの等級です。
当店では以前のブログ記事でも書きましたが、F☆☆☆☆であっても「放散量がゼロである」ということではなく、あくまで「最も放散量が少ない等級」です。

その点で、天使の椅子は異なります。
接着剤も塗料も天然素材のみで構成されているため、ホルムアルデヒドを排出しません。
「排出量が少ない」ではなく「排出しない」。これは化学物質過敏症の方、小さなお子さまがいるご家庭、アレルギーが気になる方にとって、非常に意味の大きな違いです。

素材に対して徹底して誠実であること——それはビッグモリーズが家具選びで大切にしていることと、深く重なっています。

4.正直に伝えたいこと——慣れるまでの話

最初は少し辛く感じることがある

ここからは、少し正直な話をします。
天使の椅子は、座り始めてすぐに誰もが快適に感じるかというと、そうとも言い切れません。
慣れるまでの間は、腿の裏・おしり・肩・腰に痛みや違和感を感じることがあります。
これは椅子が悪いのではなく、今まで使われていなかった筋肉や骨格の使い方が呼び起こされる、いわば「体の目覚め」のような時期だと私たちは考えています。

当店でお客さまからいただいた声をまとめると、大きく2つのパターンがあります。
ひとつは「慣れたら楽になった」というパターン。
はじめのうちは腿の裏が痛かったり、坐骨が当たる感覚が気になったりしたけれど、数週間使い続けるうちに気にならなくなり、むしろ普通の椅子では物足りなくなった、という方です。
気がついたら肩こりが以前より楽になっていた、という感想をいただくこともあります。

もうひとつは「合わなかった」というパターン。特に、長年背もたれのある椅子に慣れている方の中には、「常に姿勢を意識しないといけない感じがして、少し辛い」とおっしゃる方もいます。
背もたれがないため、もたれて休むことができない椅子です。
デスクワークの合間に深く腰掛けて一息つく、という使い方を想定されている方には、最初はなじみにくいかもしれません。

「合う人」と「合いにくい人」

正直なところ、天使の椅子はどんな方にでも向いているとは言い切れない面があります。
姿勢や体の使い方に意識がある方、腰痛・肩こりをなんとかしたいと感じている方、長時間のデスクワークや集中作業が多い方、化学物質を気にするご家庭の方などには、特に向いていると感じます。
体を使うスポーツや仕事をされている方など、体の感覚が鋭い方も、この椅子の違いを感じ取りやすい傾向があります。

一方、ふだん背もたれに寄りかかって長時間過ごすことに慣れている方や、スツールタイプの椅子を使ったことがない方は、慣れるまでに時間がかかる可能性があります。

すでに腰の痛みがかなり強い状態の場合は、まず医師への相談を優先してください。
迷っている方はまずは店頭でお試しいただくことをおすすめしています。
横から写真を撮って姿勢の変化を確かめていただくことも、店頭では可能です。
椅子は感覚で選ぶものですから、まず体で体験していただくのが一番です。

慣れた先にあるもの

長く使い続けているお客さまの声で印象に残っているのは、「気がついたら楽になっていた」という表現です。
意識して姿勢を直そうとしていたわけでも、特別なトレーニングをしたわけでもない。
ただ毎日その椅子に座っていたら、いつのまにか肩や腰の辛さが気にならなくなっていた——。

頑張らなくてよい。
気合いで保たなくてよい。
ただ座るだけで、体が自然にあるべき方向へと導かれていく。それがこの椅子の、本当の価値だと思います。

店頭でお試しいただけます。ぜひお声がけください。

4.正直に伝えたいこと——慣れるまでの話

腰痛や肩こりのことを考えるとき、多くの方はストレッチをしたり、姿勢に気をつけたり、マッサージに通ったりします。
それはどれも大切なことです。
でも、毎日何時間も座っている椅子そのものを見直す、という発想はなかなか出てこないかもしれません。

天使の椅子のアプローチは少し違います。
「姿勢を頑張って直す」のではなく、「自然に姿勢が促される場所に座る」という考え方です。
体を矯正する道具ではなく、人間が本来持っている力を引き出してくれる椅子——そういう表現が、一番しっくりくると私たちは感じています。

機能を加えることで体を補助するのではなく、余計なものを削ぎ落としてシンプルな形にすることで、体そのものの力を引き出す。
山桜の無垢材、蜜蝋と亜麻仁油の塗装、天然素材の接着剤——すまうとが素材に徹底してこだわるのも、同じ哲学から来ているように思います。
「本来そこにある良いもの」を大切にする、という姿勢です。

私たちビッグモリーズが「よい家具をおすすめする」というテーマでものを選ぶとき、この椅子は自然と候補に入ってきます。
派手なアピールはしない。でも、座ってみた人が変わる。そういう家具が好きだからです。

腰や肩の辛さを感じていて、椅子を変えることで何かが変わるかもしれないと少しでも思った方がいれば、ぜひ一度、実物に座ってみてください。
横から写真を撮って比べてみましょう。きっと、何かに気づいていただけると思います。

整体師による解説動画はこちら >>
すまうとの商品一覧はこちら >>

◆ 岡山県和気町で家具の販売・修理ならbigmoriesへ。

岡山県和気郡和気町 家具と雑貨販売 Bigmoriesの店舗画像

Fax: 0869-92-9555
〒709-0442 岡山県和気郡和気町福富512-1
Mail: info@bigmories.com
Tel: 0869-92-0266