
「椅子の脚でフローリングに跡が…?」
家具屋が教える後悔しないチェア選びと対策

椅子を使うたびに、気になる床の跡や傷。
気づけばフローリングがへこんでいたり、畳が傷んでいたり——そんな経験はありませんか?
実は、ちょっとした工夫で防げるものばかり。
家具屋の視点で、床とチェアの“ちょうどいい関係”をご紹介します。
▼目次
1.チェアの脚の跡はなぜ残る?
床材別(フローリング・クッションフロア・畳)の正しい対策
2.フローリングのへこみは直せる?
チェアによる傷を軽減するスチームアイロンの方法
3.チェアマットで安心…の落とし穴?
結露による床の変色・カビに注意
4.ダイニングチェアで床を傷つけないために
カーペットとフェルトクッションの正しい使い方
5.畳でチェアを使うときの考え方
畳を守る基本対策とチェア選び
6.まとめ
チェアと床は「セット」で考える
1.チェアの脚の跡はなぜ残る?
床材別(フローリング・クッションフロア・畳)の正しい対策
椅子を置いてしばらくすると、脚の形がそのまま床に残ってしまう。
これは決して珍しい現象ではありません。
原因は「重量」そのものよりも、荷重が一点に集中し、長時間動かないことにあります。
まずフローリングの場合。
無垢材・複合材を問わず、一度ついた凹みは完全には元に戻らないと考えた方が現実的です。
対策としては、毛足のごく短いラグや、硬質タイプのチェアマットを併用し、圧力を分散させることが有効です。
クッションフロアは性質が異なり、短期間であれば自然に復元する素材です。
月に一度でも位置を少しずらすだけで、劣化の進行は大きく変わります。
畳の場合はさらに注意が必要です。
繊維が潰れると見た目以上にダメージが残ります。
チェアマットの使用、もしくは脚が面で接地する「スキー脚」デザインの椅子を選ぶことで、畳への負担を最小限に抑えられます。
2.フローリングのへこみは直せる?

チェアによる傷を軽減するスチームアイロンの方法
「椅子の脚で床がへこんでしまったが、もう直らないのか」という相談は非常に多く寄せられます。
結論から言うと、完全な修復は難しいものの、軽減できるケースはあります。
特に無垢フローリングの場合、木材内部の繊維が潰れているだけであれば、水分と熱を加えることで膨張させることが可能です。
方法は以下の通りです。
・軽度な凹み(無垢材・自然塗装フローリング向け)
へこんだ部分に水滴を数滴垂らすか、濡らして固く絞ったタオルを当てる。
タオルの上から数秒、中温のアイロンを押し当てる(焦げ付かないよう注意)。
タオルが乾かないよう水を補給しながら、凹みが目立たなくなるまで①と②を繰り返す。
これを数回繰り返すと、目立たなくなることがあります。
ただし、塗装面が傷んでいる場合や、合板フローリングでは効果が限定的です。
・中度〜軽度な凹み(塗装フローリング・パテ使用)
補修箇所周辺をマスキングテープで保護する。
フローリングの色に合わせた補修用パテ(シェラックスティックなど)を温めてへこみに埋め込む。
ヘラで余分なパテを削り取り、表面を平らにする。
補修ペンやクレヨンで木目柄を描き、指でなじませて仕上げる。
・専門業者への依頼を検討するケース
・凹みが深く、木材がえぐれている場合。
・ウレタン塗装やUV塗装が施されたフローリングで、塗装が剥がれる可能性がある場合。
・DIYでの補修が難しい、またはきれいに仕上げる自信がない場合。
3.チェアマットで安心…の落とし穴?
結露による床の変色・カビに注意
「床を傷から守るためにチェアマットを敷いているのに、気づいたら床が変色していた」——
これは実際に家具屋として多く寄せられるご相談のひとつです。
なぜチェアマットの下で変色やカビが起こるのか?
最大の原因は湿気の滞留です。
特に冬場や梅雨時期、以下のような環境条件が重なると、床とマットの間に湿気が溜まりやすくなります。
・室内外の温度差による結露
・床下の湿気がフローリング表面に上がってくる
・密閉性の高いビニール製マットが通気を遮断してしまう
このような状況が続くと、目に見えないうちに床材にカビが発生したり、変色してしまうことがあります。
特に無垢フローリングの場合は湿気を吸いやすく、数日間で影響が出ることもあります。
(チェアマットにより紫外線の影響を受けにくくなり、マットのない場所に比べて色の差が生まれてしまう場合もあります)
どんなチェアマットが危ない?
すべてのチェアマットが悪いわけではありませんが、以下の条件に当てはまるとリスクが高まります。
・床全面にピッタリ密着する透明ビニールタイプ
・厚みがあり、重みで床と密着しているもの
・長期間一度も動かしていないもの
こうしたマットは特に「掃除のときに邪魔だから」と動かさずに使いがちですが、それが結果的に湿気の滞留を招くのです。
安心して使うための具体的対策
- 月に1〜2回はマットをめくって換気する
湿気を抜く最も効果的でシンプルな方法です。めくったついでに床を乾拭きするだけでも効果があります。 - 通気性のあるマットを選ぶ
完全に密閉するタイプではなく、床との接地面積が少ない構造のものや、布製・編み目のあるタイプも候補になります。 - 床の下地環境も考慮する
マンションの1階や古い木造住宅など、もともと床下の湿気が多い場合は、チェアマットだけでなく除湿対策もあわせて行う必要があります。 - 変色が気になる場合は部分敷きに切り替える
全面ではなく、チェアの動線部分だけに絞って敷くことで、湿気のたまりやすさを抑えられます。
スチール製や硬くて細い椅子の脚、キャスター付きの椅子などを使用する場合は、引きずり傷やキャスターによるヘコミを防止することが出来ます。
ですが、「敷いたらそのまま」が危険なのがチェアマットの落とし穴です。
正しく使えば確かに床を守ってくれる便利な道具ですが、湿気対策との“セット使用”が前提であることを意識するだけで、リスクは大幅に軽減されます。
気になる場合は一度、マットをめくって床の状態をチェックしてみてください。
「何も起きていない」うちに気付くことが、最も確実な床保護になります。
4.ダイニングチェアで床を傷つけないために
カーペットとフェルトクッションの正しい使い方
ダイニングスペースは、椅子による床ダメージが最も起こりやすい場所のひとつです。
理由は単純で、「人が座る重さがかかった状態で、頻繁に椅子を引きずる」から。
家具屋の立場から見ると、床材よりも使い方の影響が大きい場所だと感じます。
まず有効なのが、テーブル下に部分敷きのカーペットを取り入れることです。
ポイントは、テーブル天板より一回り大きいサイズを選ぶこと。
椅子を引いたときに脚がすべてカーペットの上に乗ることで、摩擦が直接床に伝わるのを防げます。
この場合、毛足は短めが理想です。食べこぼしの掃除がしやすく、椅子の動きも安定します。
カーペットを使用するなら、専門店が取扱う丸巻きカーペットがおすすめです。
折りたたんで販売されているカーペットは折りジワが引っかかったり、端っこがめくれやすいので注意が必要です。
もう一つの定番対策が、椅子の脚裏にフェルトクッションを貼ることです。
ただし、ここで意外と差が出るのが「サイズ選びと貼り方」です。
市販のフェルトをそのまま貼ると、脚からわずかにはみ出すことがあります。
この状態だと、接着剤の縁にほこりや髪の毛が付着しやすくなり、それを引きずることで、フェルト自体が床を傷つける原因になることがあります。
また、脚裏の汚れをしっかり取ってから張り付けることで、剥がれを防止することができます。
家具屋としておすすめしているのは、
・脚裏より一回り小さくカットする
・貼る前に脚裏を乾拭きして汚れを取る
・消耗品と割り切り、定期的に貼り替える
という使い方です。
「貼ったから安心」ではなく、「状態を見ながら使う」ことで、床への負担は確実に減らせます。
床を守ることは、同時に椅子そのものを長く快適に使うことにもつながります。
家具屋の立場からは、シールタイプよりも、外れにくい打ち込みタイプをおすすめします。
5.畳でチェアを使うときの考え方
畳を守る基本対策とチェア選び
畳は、チェアの影響を特に受けやすい床材です。
表面がい草でできており、点で荷重がかかると繊維が簡単に潰れてしまうためです。
そのため、畳の上でチェアを使う場合は、必ずチェアマットや敷物を併用し、直接置かないことが基本になります。
加えて、脚先が点ではなく面で接地する「スキー脚(そり脚)」デザインのチェアを選ぶことで、荷重を分散しやすくなります。
畳でチェアを使う際は、
・敷物で守る
・チェアの形状で負担を減らす
この二つを組み合わせることが、現実的で長く使える方法です。

6.まとめ
チェアと床は「セット」で考える
椅子による床の傷や跡は、避けられないものと思われがちです。
しかし実際には、床材の性質を知り、使い方を少し工夫するだけで、防げるケースが多くあります。
高価な道具や大がかりな対策よりも、
・位置をときどき変える
・敷物やフェルトを正しく使う
・状態を気にかける
こうした小さな習慣の積み重ねが、床もチェアも長持ちさせます。
家具は「置いて終わり」ではなく、「使いながら付き合うもの」。
床とチェアの関係を見直すことは、暮らし全体を見直すことにもつながります。







