ソファのレザー表示に注意!合皮と本革の違い、どこまで知っていますか?


ソファのレザー表示に注意!合皮と本革の違い、どこまで知っていますか?


ソファや椅子を選ぶとき、「レザー」という言葉に安心感を抱く方は多いのではないでしょうか。
上質で長く使えるイメージがある一方で、実は“レザー”と表記されているからといって必ずしも本革とは限らないのが現実です。
合成皮革(合皮)と本革では、見た目は似ていても寿命や手触り、経年変化に大きな違いがあります。
知らずに選んでしまうと、「数年でボロボロになった」「思ったより快適じゃなかった」と後悔することも。

この記事では、レザー表記の仕組みや合皮と本革の違い、長持ちさせるためのポイントを家具販売の現場経験も交えながら解説します。
家具を選ぶ前に知っておくと安心な知識を、一緒に確認してみましょう。


1.「レザー」と書いてあっても本革とは限らない?表示の落とし穴

家具を選ぶとき、「レザーソファ」や「レザーチェア」と書かれている商品を見かけることがあると思います。
見た目には高級感があり、つるりとした手ざわりに「これは本革なんだな」と思い込んでしまう方も少なくありません。
でも実は、この「レザー」という言葉――本革だけを指しているとは限らないのです。

というのも、日本では「レザー」という表記について、法的には明確な定義がないため、合成皮革(合皮)や人工皮革であっても「PUレザー」「PVCレザー」といった名前で販売されることが一般的です。
「レザー」と聞けば、多くの方が「革=天然皮革」をイメージされると思いますが、実際は見た目を似せただけのまったく別の素材であることが多いのです。

では、なぜそんな紛らわしい表現が広まっているのでしょうか。
それは、メーカーや販売側が「革のような印象」を与えつつ、コストを抑えて製品を提供するためです。
合皮には「安価」「軽い」「水に強い」といった利点もありますから、目的に応じては良い選択にもなりえます。

ただし、合皮は長期間の使用にあまり向いていません。
表面のポリウレタン層が時間とともに劣化し、「加水分解」という現象によって、ひび割れやベタつき、剥がれが発生してしまうことがあります。

こうしたトラブルを防ぐためにも、家具を購入するときは「レザー」の文字に惑わされず、その素材の中身をしっかりと確認することが大切です。
タグや商品説明欄に「素材:合成皮革」と小さく書かれていることがあるので、気になる場合は遠慮なく販売スタッフに尋ねてみてください。

2.安価なソファの合皮事情。家具屋が見てきた「すぐダメになる」実例

家具店でお客様と接していると、「数年前に買ったソファがボロボロになってしまって……」というご相談を受けることがあります。
特に多いのが、海外製の合皮(合成皮革)ソファ。
見た目はスタイリッシュで価格もお手頃とあって、つい手に取りたくなる商品ですが、なかには驚くほど短期間で劣化してしまうものもあるのが実情です。

実は、これは他人事ではありません。
当店でも過去に、海外製のソファを比較的安価で販売していた時期がありました。
表面は美しく、手ざわりもよく、価格も魅力的だったため、多くのお客様にお選びいただきました。

ところが、数年も経たないうちに、「座面がボロボロになってしまった」「黒い粉が出て掃除が大変」といったお声が相次ぐようになりました。
中には、たった1年ほどでひび割れや剥がれが起きたという例もありました。

原因は「加水分解」
空気中の湿気や体から出る汗により、合皮の素材が内部から分解され、表面が崩れていく現象です。
特にPUレザーと呼ばれる柔らかい合皮は、加水分解に弱く、日本のように高温多湿な環境では劣化が早まってしまうのです。

この製品についての理解が足りておらず、お客様にご迷惑とご心配をおかけしてしまいました。本当に申し訳なく思っております。

海外製品がすべて悪いわけではありません。
ただ、大量生産の過程でコストを優先するあまり、素材の質や耐久性が二の次になってしまっていることも少なくないのです。
さらに、輸入品の場合は修理やパーツの取り寄せが難しいケースも多く、張り替えやメンテナンスができず、結局買い替えざるを得ない状況になってしまいます。

家具は毎日触れるもの。
だからこそ、価格やデザインだけでなく、「長く使えるかどうか」「修理できるか」といった視点でも選んでいただけたらと思います。

3.合皮ソファに多い“加水分解”とは?仕組みと起こる原因

合皮(合成皮革)のソファで起こるトラブルのひとつに、「加水分解(かすいぶんかい)」という現象があります。

聞きなれない言葉かもしれませんが、加水分解とは、素材の中に含まれる化学的な結びつきが、水分と反応して壊れていく現象のこと。
空気中の湿気や、人の体から出る汗、長時間触れていることで発生する水分などが、ゆっくりと素材にしみこみ、時間の経過とともに劣化を引き起こします。

たとえば、表面がツルっとしたPUレザー(ポリウレタン系合皮)は、柔らかくて手ざわりが良い反面、この加水分解にとても弱いという特性があります。
高温多湿な日本の気候ではとくに劣化が早く、ひどい場合は購入から1〜2年でひび割れたり、表面がポロポロとはがれてくることもあります。

私たち家具店の現場でも、「座面が粉をふいたようになっている」「掃除していたら表面が手についた」といったご相談を受けることがあります。
これは、加水分解によって表面のコーティングが崩れ、素材そのものが壊れ始めているサインです。

さらに厄介なのは、この劣化が一度始まると、止めることが難しいという点です。
見た目ではまだ使えそうに見えても、内部ではすでに劣化が進んでいる場合があり、表面が剥がれ始めると修理は難しくなってしまいます。

もちろん、合皮にもメリットはあります。
軽くて扱いやすく、見た目も本革に似せて作られているため、価格を抑えながら高級感を演出することができます。
ただしその一方で、「寿命が短い」という特徴もあることを知った上で選ぶことが大切です。

ソファを長く愛用したいと考えている方にとって、この“加水分解”という現象は、ぜひ知っておいていただきたいポイントのひとつです。
購入時の素材表示や製造国、保証期間などもあわせて確認すると、より安心して家具選びができるのではないでしょうか。

4.本革と合皮の違いを知る。耐久性・手触り・吸湿性の差

当店のヌメ革ソファの表面。傷のように見えるのは、「血筋(ちすじ)」と呼ばれる、牛の血管の跡です。

合皮と本革。見た目は似ていても、実際に使ってみると、その違いは思った以上に大きく感じられます。
特に注目したいのが、耐久性・手触り・吸湿性といった使用感の差です。

まず耐久性について。
本革は動物の皮をなめしてつくられる天然素材で、繊維が複雑に絡み合った構造をしており、非常に強靭です。
日常的な摩擦や荷重にも強く、丁寧に手入れをすれば10年、20年と長く使い続けることができます。
一方、合皮(PUレザーやPVCレザー)は布地にポリウレタンや塩化ビニールをコーティングした人工素材のため、数年で表面がひび割れたり、加水分解と呼ばれる劣化を起こすことが多く、寿命はおおよそ2~3年とされています。(レザーが製造されて家具に使用され、お客様の元に届くまでの期間を含めるともっと短くなります)

次に手触りの違いです。
本革の質感は、しっとりとやわらかく、手に吸い付くような独特のぬくもりがあります。
これは天然素材ならではの「毛穴」や「凹凸」が肌に心地よい刺激を与えてくれるため。
たとえば、本革のソファに腰かけたときの肌あたりのやさしさや、使い込むごとに柔らかくなる鞄や財布のなじみ方は、合皮ではなかなか再現できません。
合皮は一見なめらかで均質ですが、やや冷たく硬い印象があり、経年で質感が損なわれやすいのが特徴です。

そして吸湿性。
本革は呼吸する素材ともいわれ、空気中の湿気を吸ったり吐いたりする機能を備えています。
夏は蒸れにくく、冬は体温で温まりやすいという、肌に直接触れる場面でも快適性が高いのが魅力です。
これに対し合皮は通気性がほとんどないため、汗ばみやすく、長時間の使用ではベタつきやすいといった欠点もあります

こうした特徴をふまえると、本革は見た目だけでなく「触れて、使って、味わう」ことでその価値が深まる素材だといえるでしょう。
毎日使うものだからこそ、素材選びは慎重に。長く付き合うつもりで、本革という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

5.なぜ加水分解は防げない?合皮の寿命と正しい付き合い方

合成皮革(合皮)は、本革に比べて手に取りやすい価格帯や扱いやすさから、日常使いの家具や雑貨によく使われています。
しかし、合皮には避けられない「加水分解」という経年劣化の宿命があります。

たとえば、ソファの座面やバッグの取っ手など、頻繁に触れる部分は劣化が進みやすく、ある日突然、表面がポロポロとはがれてくることも珍しくありません。
これは修復が難しく、基本的には張り替えや買い替えが必要になります。

とはいえ、合皮をできるだけ長く使うためにできることもあります。
まず、直射日光や高温多湿を避けた場所に置くことが大切です。
日々のお手入れとしては、柔らかい布で乾拭きする程度で十分。
汚れが気になるときは、水で薄めた中性洗剤を使い、固く絞った布で軽く拭き取るとよいでしょう。
また、通気性のよい布で覆うなどして、湿気をこもらせない工夫も有効です。

合皮はその手軽さと見た目の美しさから、気軽に使える素材ですが、劣化のリスクを理解しておくことが大切です。
長く付き合うには、適切な環境とお手入れが欠かせません。
寿命を知ったうえで、使いどころを見極めることが、合皮と上手につき合うコツといえるでしょう。

6.本革と長い付き合いをするために ─ 経年変化を楽しむという選択

本革の大きな魅力は、なんといっても「時間とともに育つ」という点にあります。

合成皮革が経年劣化によって表面が剥がれてしまうのに対し、本革は使い込むほどに風合いが深まり、世界に一つだけの表情を見せてくれます。
シワやツヤ、色の変化は「劣化」ではなく「エイジング」と呼ばれ、その人の暮らしや使い方が刻まれる特別な魅力となるのです。

ただし、本革は自然素材であるため、汗や皮脂の影響を受けやすいという一面もあります。
汗が付着したまま放置すると、湿気を含んでカビが発生したり、塩分によって革が乾燥し、表面にひびが入ってしまうこともあります。
使用後には軽く乾拭きをして余分な水分を取り除き、風通しのよい場所で休ませることが長持ちの秘訣です。

日々のケアとしては、柔らかな布での乾拭きに加え、定期的に専用クリームで油分を補ってあげることが大切です。
そうすることで、ひび割れや乾燥を防ぎ、しなやかさを保つことができます。

家具やバッグ、靴など、生活の中で長く使うものほど、本革を選ぶ価値は大きくなります。
時間が経つほどに味わいを増し、思い出や愛着も積み重なっていく──。
それこそが「本物の素材」としての、本革ならではの魅力といえるでしょう。

7.当店の椅子の張り替えセットはなぜ長持ち?日本製レザーの強み

椅子を張り替える際、布地やレザーの色柄に目がいきがちですが、「素材そのものの質」にも、ぜひ少し目を向けてみてください。

特に合成皮革の場合、質の違いは長く使ってから出てくるものです。
摩擦や湿気、紫外線などの影響を受ける中で、耐久性や風合いに差がついていきます。
そうした面から見ても、日本製のレザーは、丁寧な製造工程や品質管理のもとに作られており、安心して使える素材のひとつです。

もちろん、すべての日本製が絶対に優れているというわけではありませんが、「長く大切に使いたい」という気持ちがあるなら、ひとつの選択肢として検討してみてもいいかもしれません。

ちなみに、当店で販売している椅子の張り替え用レザーも、国内メーカーの高品質な素材を採用しています。
高耐久・防炎・防汚などの基本的な機能に加え、耐アルコール・耐次亜塩素酸といった、あると嬉しい機能も。
せっかく頑張って張り替えるのなら、少しでも長くキレイに使いたいものですよね。

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8.お気に入りのソファと、これからも。

ふと座った瞬間の安心感や、なんでもない日常にそっと寄り添ってくれる存在。
ソファやチェアは、家族と過ごす時間や一人のくつろぎを受け止めてきた、大切な「居場所」かもしれません。

長く使っていくうちに表面のレザーがひび割れたり、座面のへたりが気になったり。
けれど「もう古いから」「見た目がちょっと…」という理由だけで手放すのは、少し惜しい気もしますよね。

張り替えやクッションの交換をすることで、見た目も座り心地も、驚くほどよみがえります。
さらに、張地を変えればお部屋の雰囲気にも新しい風が。
修理というより、“リメイク”と呼びたくなるような、暮らしに寄り添う再出発です。

「なんとなく捨てて買い替える」ではなく、「大切な家具を手直しして、これからも一緒に使う」。
その選択は、ものを大事にする心と、環境にもやさしい未来につながっていくはずです。

お気に入りのソファやチェアが、またこれからの暮らしにしっくりと馴染む一脚へ。
私たちがそのお手伝いをいたします。