食器棚を選ぶポイント|家具屋が教える後悔しない選び方


食器棚を選ぶポイント
家具屋が教える後悔しない選び方


食器棚は、ただ食器をしまうだけの家具ではありません。
朝の忙しい時間に家族のために食事を用意するとき、ふとお気に入りのマグカップを手に取るとき、誰かをもてなすためにお皿を選ぶとき――毎日の暮らしの中で、何気なく触れる「いつもの場所」こそが、食器棚なのかもしれません。

でも、いざ選ぼうとすると迷うもの。
置き型と作り付け、扉の種類、素材やサイズ、見た目の好みと使いやすさ。
さらに最近では、「モイス」などの新素材や、地震対策まで気にする方も増えてきました。

私たち家具屋の現場でも、食器棚選びに関するご相談はとても多く、「どれが一番いいんですか?」というご質問をよくいただきます。
でも実は、「一番いい食器棚」は、人それぞれ違います。
家の間取りやご家族の人数、使う人の習慣によって、本当に合う食器棚は変わってくるのです。

この記事では、家具屋の視点から、見た目や価格だけでは判断しづらい「食器棚の選び方」について、具体的なポイントをわかりやすくお伝えしていきます。
長く使う家具だからこそ、納得して選ぶためのヒントをぜひ見つけてください。


1.毎日の暮らしに欠かせない「食器棚」こそ、じっくり選びたい

キッチンの中でも、毎日自然と手を伸ばす場所――それが食器棚です。
料理を盛りつける器、朝食に使うお茶碗、マグカップ、保存容器など、暮らしの道具をすっきり収納しつつ、すぐに取り出せる。
そんな存在は、キッチンの動線をスムーズにし、家事のストレスを軽減してくれます。

一方で、食器棚は大型家具のひとつでもあり、購入後の買い替えや移動が簡単ではありません。
「とりあえずこれでいいか」と安易に選んでしまうと、使いにくさや耐久性の面で後悔してしまうことも。
特に最近は、デザイン性だけでなく、収納力・安全性・素材の耐久性など、多くの要素を比較検討しながら選ぶお客様が増えています。

家具屋としてお伝えしたいのは、食器棚選びは「暮らし方そのものを見つめ直す機会」であるということです。
料理をよくする方にとっては、調理中の動線を意識した収納が快適さを左右しますし、小さなお子さんがいる家庭では、安全性や扉の開閉のしやすさも重要です。
収納する食器の量や種類、頻度によって、必要な棚の構成も大きく変わります。

また、近年では「作り付け」と「置き型」の食器棚、素材や耐震対策など、選択肢がとても多様化しています。
特に注目されているのが、「MDF素材」や「モイス」などの現代的な素材。
価格やデザイン性に優れる一方で、水や湿気に弱かったり、重量があるため移動が大変だったりと、注意すべき点もあります。

「見た目が好きだから」「値段が手頃だったから」だけで選ぶと、数年後に「もう少し考えればよかった」と感じることも。
だからこそ、この記事では、家具屋の目線から、暮らしに本当にフィットする食器棚の選び方を丁寧にご紹介していきます。

収納のしやすさは?素材の違いは?扉の形状で使いやすさは変わる?地震対策はどうなってる?――そんな疑問をひとつずつ解消していける内容になっていますので、これから食器棚を選ぼうと考えている方はもちろん、今使っている棚に少しでもモヤモヤを感じている方にも、きっと参考にしていただけるはずです。

長く使う家具だからこそ、じっくり選ぶ時間を楽しんでほしい。
そんな思いを込めて、食器棚選びのヒントをお届けしていきます。

2.【まず迷う】作り付けの食器棚 vs 置き型の食器棚
それぞれのメリット・デメリット

食器棚選びで最初にぶつかるのが、「作り付け」と「置き型」どちらを選ぶかという問題です。
近年の住宅では、リフォーム時や新築時にキッチン背面に造作家具として食器棚を組み込む「作り付けタイプ」も人気があります。
一方、引っ越しの多い家庭や賃貸住宅にお住まいの方には、自由に移動・交換ができる「置き型タイプ」が主流です。
それぞれに特徴があるので、暮らし方に合った選択をすることが大切です。

作り付け食器棚のメリット・デメリット

作り付け食器棚の最大の魅力は、空間にぴったりフィットした美しい仕上がり。
壁との隙間がなく、見た目がすっきりするため、キッチン全体が洗練された印象になります。
また、設計段階から希望の収納量や家電の配置を反映させることができ、使い勝手の良いキッチン空間を実現しやすい点も魅力です。

ただし、取り外しができないため、一度設置すると気軽な模様替えや引っ越しには対応できません。
また、施工には時間とコストがかかり、家具というより「設備」に近いため、将来リフォームする際の制約になることもあります。

置き型食器棚のメリット・デメリット

一方、置き型の食器棚は、完成品や組み立て式のものが多く、購入後すぐに使えるのが利点。
デザインや素材のバリエーションも豊富で、自分の好みに合わせて選ぶ楽しさがあります。
転勤や引っ越しが多い家庭でも、持ち運んで使い続けられるのも嬉しいポイントです。

また、設置後でもレイアウト変更がしやすく、暮らしの変化に柔軟に対応できます。
ただし、壁との間にすき間ができることも多く、ホコリがたまりやすかったり、耐震性の面では固定が必要になることもあります。
サイズや高さが合っていないと、収納しづらさや圧迫感につながる場合もあるため、事前に設置場所をしっかり採寸しておくことが大切です。

3.【サイズ選びのコツ】家族構成とキッチンの広さに合わせた食器棚の選び方

食器棚を選ぶとき、見落とされがちなのが「サイズの適正」です。
「大は小を兼ねるから」と大容量の食器棚を選んだものの、実際に使い始めてみると、棚が高すぎて手が届かない、奥行きがありすぎて物が取り出しにくい、通路が狭くなって動きづらい……そんな声を私たち家具屋は何度も耳にしてきました。

特に、かつては住宅設計の現場で、設計者が男性であることがほとんどでした。
そのため、「多く収納できればそれで良い」と、収納力ばかりを重視した大型の食器棚が主流だった時代もあります。
しかし、実際に毎日キッチンに立ち、食器を出し入れするのは多くの場合女性であり、「手が届かない」「重い引き出しが開けにくい」「奥に何があるかわからない」といった不便さが、日常の小さなストレスになってしまっていたのです。

今は、使う人の視点で家具を選ぶ時代です。
まず意識したいのは、「誰がどのように使うか」。
たとえば一人暮らしなら、幅60〜90cm程度のスリムなタイプで十分かもしれませんし、ファミリー世帯であれば、食器の数も多くなるため幅120cm以上のものが必要になるケースもあります。

また、食器棚の「奥行き」も重要なポイントです。
45cm〜50cmが一般的ですが、あまりに奥行きが深いと、奥にしまったものが取り出しにくく、かえって収納効率が下がってしまいます。
使う頻度の高い食器や家電を手前に、使用頻度の低いものを上段や奥に置くなど、日常の動線をイメージしながら選ぶことが大切です。

高さにも注意が必要です。
天井までの大型タイプは収納力抜群ですが、踏み台なしでは届かない高さになってしまうと、結局「使わない棚」になってしまいます。
特にご年配の方やお子さんと一緒に使う場合は、安全性の面からも注意が必要です。

さらに、設置場所とのバランスも忘れてはいけません。
食器棚の前に冷蔵庫や作業台がある場合、扉の開閉スペースや通路幅も計算に入れておかないと、日々の作業に支障をきたすこともあります。

「収納力がある=使いやすい」とは限らない。
大切なのは、“自分の暮らし”にちょうど良いサイズを選ぶこと。
家具屋として、そう実感しています。
次の章では、デザイン性にも関わる「扉の形状」や「見せる収納」について、さらに詳しくご紹介していきます。

4.【扉の形状とデザイン】使い勝手と見た目を左右するポイント

食器棚を選ぶとき、どうしても「サイズ」や「収納力」ばかりに目が行きがちですが、実は扉の“形状と開き方”こそ、日々の使い勝手に直結する重要な要素です。
加えて、ガラス戸か板戸かといった“見た目”の選択も、インテリア全体の雰囲気に影響を与えます。

ガラス戸 vs 板戸|「見せる」か「隠す」か

まず、扉のデザインを大きく分けると「ガラス戸」と「板戸」があります。

ガラス戸は中の食器が見えるため、お気に入りの器を飾るように収納したい方にはぴったりです。
明るく抜け感のある印象を与えるため、キッチン空間が広く感じられるのも魅力。
何がどこにあるか一目で分かるため、家族全員が使いやすいというメリットもあります。
ただし、常に中を見られる状態になるため、雑然とした印象にならないよう、整理整頓が求められます。

板戸は中が見えない分、収納物の見た目を気にせずしまえるため、使い勝手の良さを求める方に根強い人気があります。
食器の色や形に統一感がなくても気にせず収納できるため、日常使いにはとても実用的。
デザイン面では、木の質感や塗装で重厚感や温かみを出せるため、ナチュラルやモダン、和風テイストにもよくなじみます。
一方で、中に何が入っているのか分かりづらく、特に来客用の食器など、長期間しまいっぱなしになるものの管理には少し注意が必要です。

開き戸・引き戸・フラップ式|“開き方”が暮らしを変える

扉のデザインとともに、忘れてはならないのが「開き方」です。
空間の広さや使う人の動線に合わせて、最適なタイプを選ぶことで、日々の動作がぐんと快適になります。

開き戸(開戸)
最も一般的なタイプで、左右に観音開きのように開く扉です。
大きく開くため中が見やすく、出し入れもしやすいのがメリット。
ただし、開いた扉の分だけ前方にスペースが必要になるため、食器棚の前に人が立つ場面や、後ろにダイニングチェアなどがあるような狭い場所では、やや不便さを感じることもあります。
小さなお子さんがいる家庭では、扉の開閉中にぶつからないよう注意が必要です。

引き戸(スライド式)
横にスライドして開く引き戸は、扉の開閉にスペースを取らないため、壁にぴったり設置したい場合や、キッチンがやや狭いご家庭に最適です。
開いたままでも邪魔にならないため、料理中に頻繁に食器を出し入れするシーンでも重宝します。
ただし、開口部分が半分ずつしか開かない構造のため、一度に棚全体にアクセスしたい場合には不向きなことも。
また、安価な製品ではスライドのレールが重く感じられることもありますので、滑らかな開閉ができる品質の良いものを選ぶと長く快適に使えます。

フラップ式(上開き扉)
近年増えているのが、上に持ち上げるように開くフラップ扉。
特に上部収納(吊り戸棚)に多く見られます。
扉を開いたときに顔や手元に干渉しないため、作業中でも邪魔にならず、スタイリッシュな印象を与えるのもポイントです。
ただし、ある程度の力が必要な構造のものもあり、小柄な方や高い場所の収納にはやや使いづらさを感じることも。
バネやダンパーを使ったソフト開閉タイプであれば、軽い力でスムーズに開け閉めができるため、年配の方にも安心です。

5.【素材の違い】無垢材・MDF・化粧合板の特徴と注意点

食器棚を選ぶとき、「デザイン」や「サイズ」だけでなく、ぜひ注目していただきたいのが「素材の違い」です。
見た目ではなかなか分かりにくい部分ですが、素材によって重さ、強度、耐久性、そしてお手入れのしやすさが大きく変わってきます。
ここでは、家具によく使われる「無垢材」「MDF」「化粧合板」それぞれの特徴と注意点について、家具屋の立場からわかりやすくお伝えします。

無垢材:自然の美しさとあたたかみが魅力

無垢材とは、一本の木から切り出したそのままの天然木のこと。
木目や色合いが一つひとつ異なり、同じものが二つとないという魅力があります。
年月とともに色味が深まり、風合いが増していく「経年変化」も楽しみのひとつです。
手触りもやさしく、木のぬくもりを感じられるのは無垢材ならでは。

ただし、湿気や乾燥によって膨張・収縮しやすく、反りや割れが生じることがあります。
また、価格は高めで、重さもあるため、搬入や移動には注意が必要です。

MDF:安価でデザイン豊富だが水に弱く、重量がある

MDF(中密度繊維板)は、木材の繊維を圧縮して接着剤で固めた工業製品です。
価格が比較的安く、加工がしやすいため、曲線的なデザインや塗装仕上げにも向いています。
最近では、表面に化粧シートを貼ったMDF製の食器棚も多く出回っており、見た目のバリエーションも豊富です。

しかしながら、水濡れには非常に弱いという大きな弱点があります。
水が染み込むと膨らんでしまい、一度ふやけてしまうと元には戻りません。
特に、天板や炊飯器を置くスペースに使われている場合は注意が必要です。

そしてもうひとつ、家具屋として強くお伝えしたいのは、MDF製の家具が非常に重いことです。
店頭で販売している際、特に配達のときにスタッフが「この重さには驚く」という声をよく聞きます。
運び出しや設置の際に重量があるため、一人での持ち運びは難しく、搬入経路の幅や階段の有無によっては設置自体が大変になることも少なくありません。
お客様にも事前にこの点をお伝えし、必要であれば搬入経路の確保や搬入補助の手配をお願いしています。

重量のある家具は安定感がある反面、移動や模様替えを頻繁に行いたい方には不向きな場合もありますので、この点も選ぶ際の重要な判断材料にしていただきたいと思います。

6.【収納力と使い勝手】引き出し派?棚板派?理想の使い分けについて

食器棚の収納方法には、大きく分けて「引き出し」と「棚板(可動棚)」があります。
どちらもメリットがあり、使い勝手や収納力に違いがあるため、ご家庭のライフスタイルや収納するものによって理想的なバランスを見極めることが大切です。

引き出しのメリットと注意点

引き出しは、収納物を一目で確認しやすく、奥まで無駄なく使えるのが最大のメリットです。
例えばカトラリーや小皿、調理器具など細かいものの収納に適していて、取り出しやすさも抜群です。

ただし、近年の市場ではコスト削減のために、垣板(引き出しの側面)に直接前板を取り付けたタイプの引き出しや、垣板の高さを低く抑えた簡易的な設計のものも増えています。
これにより価格は抑えられますが、壊れやすかったり、思ったほど収納できない場合があります。

また、引き出しの「レール」部分の品質によって耐久性に大きな差が出ます。
安価なレールは動きがぎこちなくなりやすく、長期間の使用で故障しやすいことがあります。
一方で、スムーズな動きと耐久性に優れたフルスライドレールやソフトクローズ機能付きの高品質レールを採用した製品も増えており、快適な使い勝手が持続します。
家具を長く使いたいなら、レールの品質にも注目しましょう。

棚板のメリットと理想的な使い方

棚板は、高さを自由に調整できる可動棚タイプが多く、大きな鍋やボウル、背の高い食器などを収納するのに向いています。
シンプルで大容量の収納が可能なため、食器の種類や数が多いご家庭に重宝されます。

また、棚板の奥行きが広ければ広いほど収納力は増しますが、奥にあるものが取りづらくなる欠点も。
見やすさ・取り出しやすさを重視するなら、奥行きや棚の段数を適切に調整することがポイントです。

理想のバランスは「引き出し+棚板」の組み合わせ

実際の暮らしでは、引き出しと棚板の両方を上手に使い分けるのが賢い選択です。
たとえば、頻繁に使うカトラリーや小物は引き出しにまとめ、大きな食器や保存容器は棚板に収納する、といった使い分けです。

家具屋としては、「使い勝手をよくするには収納の中身を想像し、引き出しの数や深さ、棚板の可動範囲をしっかり確認してから選ぶこと」をおすすめしています。
見た目や収納力だけでなく、日々の使いやすさが長く快適に使えるポイントです。

7.【カビ・湿気対策に】話題の「モイス」ってなに?そのメリットとデメリット

近年、食器棚やキッチン収納の素材として注目を集めているのが「モイス(Moiss)」という素材です。
特に湿気が多い日本の住宅環境において、カビや湿気による家具の劣化を防ぐ目的で採用されることが増えています。
しかし、メリットだけでなくデメリットもあるため、家具屋としては正しい知識を持って選んでほしいと考えています。

モイスとは?

モイスは耐水性と吸放湿性を併せ持つ天然素材をベースにした建材です。
珪藻土や消石灰などが主成分で、調湿性能が高いことが特徴。
湿度が高いときには湿気を吸収し、乾燥すると放出することで室内の湿度を調節し、カビの発生を抑える効果が期待されています。

この特性から、モイスは食器棚の背板や棚板の一部に使用されることが多く、特に湿気のこもりやすいキッチン周りの環境改善に役立つ素材として人気が高まっています。

モイスのメリット

湿度調整能力
モイスは空気中の湿気を吸収・放出し、過剰な湿気を減らすことでカビや臭いの発生を防ぐ効果があります。これにより、食器や調理器具を清潔に保ちやすくなります。

耐水性がある程度ある
通常の木材よりも水分に強く、カビや腐敗のリスクが減るため、キッチンのような水気が多い場所に適しています。

安全な自然素材
化学物質を使わず天然素材を利用しているため、小さなお子様がいる家庭でも安心して使える点も魅力です。

モイスのデメリット

しかしながら、モイスにもいくつかの注意点があります。

意外とカビが発生しやすい
モイスは調湿効果があるとはいえ、湿気が極端に多い環境や換気が不十分な場合にはカビが発生することがあります。特に、モイス表面が濡れたまま長時間放置されると、かえってカビが生えやすくなるケースもあります。

カビが生えると交換が難しい
モイスを使用した食器棚でカビが発生してしまった場合、その部分の交換は簡単ではありません。多くの食器棚は一体構造のため、部分的にモイスだけを取り外して交換することができず、家具全体のメンテナンスが必要になることもあります。

交換費用が高額になる場合もある
もし交換が可能な場合でも、モイスは専用の素材であるため、修理や交換の費用が高額になることがあります。これは購入時の初期費用を抑えられても、将来的なメンテナンスコストに影響を与えかねません。

モイスは湿気対策として非常に有効な素材ですが、「万能」ではなく、使い方や設置環境によっては問題が生じる可能性もあることを理解しておくことが重要です。
家具屋としては、お客様に合った使い方やお手入れ方法のアドバイスをしながら、モイスの特性を最大限に活かした食器棚選びをお手伝いしたいと考えています。

8.【地震対策】万が一のために知っておきたい「耐震仕様」の選び方

日本は地震大国。いつどこで大きな揺れが起こってもおかしくありません。
だからこそ、食器棚の選び方においても「耐震仕様」は無視できない重要ポイントです。
ビッグモリーズでも、お客様には地震対策がしっかりされた食器棚をおすすめしています。

実際の震災での怖い体験談

過去の大きな地震では、耐震設計のない食器棚が大きな被害をもたらした例が多く報告されています。
特に、開き戸や引き出しがしっかりロックされていない家具では、揺れによって扉が開き、中の割れ物や食器が飛び出して床に散乱。
破損だけでなく、飛び散った破片でケガをした方もいます。

たとえば、ある震災の際、耐震仕様のない食器棚を使っていたご家庭では、揺れの衝撃で扉がバタバタと開いてしまい、棚の中のグラスや皿が落下し、ガラス片が足元に散乱。
幸い大きなケガはありませんでしたが、当時の恐怖と後片付けの大変さは今も忘れられないと話されていました。

食器棚の耐震仕様とは?

耐震仕様とは、大きな揺れが来た時に食器棚自体が倒れにくく、扉や引き出しが不用意に開かないように設計されていることを指します。
具体的には、

耐震ラッチ(扉ロック機能)
扉が勝手に開かないようにしっかりロックされる仕組み。これにより中の食器が飛び出すのを防ぎます。

耐震レール
引き出しが揺れで抜け落ちたり、開きすぎたりしないように滑り止めやストッパーが付いているもの。

家具転倒防止金具の取り付け対応
壁にしっかり固定できる金具が付属しているか、設置時に取り付け可能かどうかも大切です。

選び方のポイント

耐震ラッチ付きの扉かどうか確認する
扉がしっかり閉まるだけでなく、地震の揺れでも開かない構造かを必ずチェックしてください。

引き出しの耐震機能を確認
引き出しが途中で止まるストッパーや、抜け落ち防止のレールがついているかを見ておくことが安心につながります。

転倒防止金具の装備・対応状況を確認
食器棚は背の高い家具のため、地震時の倒壊防止策として壁固定が必須です。販売店や施工業者に金具の取り付けも依頼できるか確認しましょう。

設置場所にも注意
揺れやすい場所、例えば壁のない部屋の中央などは避け、壁際に固定して設置することが望ましいです。

家具屋として最も伝えたいのは、「食器棚は見た目や収納力だけでなく、地震の際の安全性も考えて選ぶべき家具」ということです。
万が一の揺れで大切な食器が割れたり、家族が怪我をしたりするのは避けたいですよね。

耐震仕様のある食器棚は、多少価格が上がる場合もありますが、安心して暮らすための必要な投資と考えていただきたいです。
地震は予測できませんが、準備はできます。
ぜひ、耐震性能を重視した食器棚選びを進めてください。

9.【家具屋が伝えたい】食器棚選びで後悔しないために覚えておきたいこと

食器棚は、毎日の暮らしに欠かせない収納家具ですが、購入後に「もっとこうすればよかった…」と後悔するケースも少なくありません。
家具屋の立場から、失敗しないためにぜひ押さえてほしいポイントをお伝えします。

まず一つ目は、「使う人の生活スタイルを第一に考えること」です。
収納力が多ければ良いというわけではありません。
たくさん入っても使い勝手が悪ければストレスの原因に。
実際にどんな食器をどのくらい使うのか、キッチンの動線や掃除のしやすさもイメージしましょう。

次に、「素材や構造をよく理解すること」です。たとえばMDF製の食器棚はデザイン豊富で安価ですが、水に弱く重いことがネック。
湿気対策や耐震性も必ず確認し、長く使えるものを選ぶことが大切です。

また、扉の形状や引き出しのレール品質も見逃せません。
扉が開け閉めしやすく、引き出しがスムーズに動くことは毎日の快適さにつながります。
耐震仕様や転倒防止金具の有無も安全面で重要です。

最後に、購入前に必ず現物を確認し、信頼できるショップで相談することをおすすめします。
カタログやネットだけでなく、実際に手で触れて使い勝手を確かめることで、失敗のリスクを減らせます。

これらを踏まえ、自分や家族の暮らしに本当に合った食器棚を選ぶことが、後悔しない最大のポイントです。

10.まとめ|自分に合った食器棚を選ぶために、今できること

食器棚選びは見た目や価格だけでなく、素材、サイズ、収納方法、耐震性能、湿気対策など、多角的に検討する必要があります。
この記事で紹介したポイントを参考に、ぜひご自身のライフスタイルにぴったり合う一台を見つけてください。

そして、購入前に家具店で実物を確認し、専門家に相談することが最も確実です。
ビッグモリーズでもご相談いただければ対応可能です。

自分に合った食器棚を選ぶことは、毎日の料理や片付けを快適にし、暮らしを豊かにする第一歩。焦らずじっくり検討し、末永く愛せる家具に出会ってください。