
畑と木と、暮らしのあいだにあるもの。ブルーベリージャムのこと
―ビッグモリーズのブルーベリージャム物語―

家具屋さんが、ブルーベリージャム?
そんなふうに驚かれることが、よくあります。
家具や雑貨を扱う「ビッグモリーズ」は、暮らしに寄り添う“もの”をお届けしてきたお店。
でも実は、もうひとつ、ちょっと意外なものを手がけているんです。
それが、手づくりの「ブルーベリージャム」。
きっかけは、地元のレストランで出会った、あるやさしい味でした。
素材そのままの風味を生かした、飾らないけれど、どこか心に残るその味をどうしても絶やしたくなくて……気づけば、私たちは畑の引き継ぎを申し出ていました。
家具づくりとはまるで違う世界に飛び込んだ私たちでしたが、土に触れ、季節の変化に寄り添いながら、少しずつブルーベリーと向き合う時間が始まりました。
この物語は、ひとつの「ジャム」が生まれるまでの道のりであり、私たちが暮らしを見つめ直した日々でもあります。
よろしければ少しだけ、お付き合いください。
1.家具と畑──ちょっと不思議な関係

私たち「ビッグモリーズ」は、家具や雑貨を通して、日々の暮らしにそっと寄り添うような、やさしさやぬくもりをお届けしてきました。
暮らしの中にほんの少しの心地よさや、ふっと笑顔がこぼれるような瞬間を届けたい。
そんな想いで、長年、家具づくりや雑貨のセレクトを続けてきました。
けれど、実はもうひとつ、私たちが取り組んでいる、少し意外なものがあります。
それが、「ブルーベリージャム」づくりです。
「家具屋さんが、なぜジャムを作っているの?」
はじめて耳にされた方からは、そうした驚きの声をいただくこともしばしばあります。
たしかに、木と土、家具とジャム。
並べてみると一見、全く関係のないもののように思えます。
けれど、このジャムには、私たちだからこそ込めることができた想いと、ささやかだけれど深いつながりの物語があります。
それは、「暮らしを豊かにするものを届けたい」という、私たちの根っこの部分にある願いから生まれたものでした。
このちいさなジャムづくりは、ある日ふと出会ったご縁から始まりました。
そして今では、スタッフみんなが愛情を込めて育て、手しごとで丁寧に仕上げる、大切な「もうひとつの仕事」となっています。
ちょっと不思議な「家具と畑」の関係。その背景にある、ひとつのやさしい物語を、これからお届けします。
2.この土地で結ばれた、食のご縁
数年前のこと、地元で長年愛されていたレストラン-BBJ-のオーナーがご家族と一緒に、ご自宅の畑で大切に育てたブルーベリーを使って、ひとつひとつ丁寧にジャムを手づくりされていました。
そのジャムを初めて味わったときの感動は、今でもはっきりと覚えています。
口に入れた瞬間、甘さは控えめなのに、果実そのものの香りと酸味がふわっと広がって、まるで自然の恵みをまるごと閉じ込めたような味わいでした。
どこか懐かしく、やさしく、そして、体の奥にじんわりと染み込むような感覚。
あの味には、まっすぐな想いと時間が詰まっているとすぐに感じました。
「こんなふうに、ほんの少しだけ心をほどいてくれる“食”も、わたしたちの手で届けられたらいいな…」
そんな想いが芽生え、オーナーのご厚意もあって、私たちの店舗でもそのジャムを販売させていただくことになったのです。
木を削って家具をつくるように、果実を煮詰めてジャムをつくる──。
手間はかかるけれど、どちらも「人の手のぬくもり」が宿るもの。
ジャンルは違っても、暮らしの中にそっと寄り添うという意味では、とても近しい存在なのだと感じています。
3.レストラン閉店の知らせと、私たちの決断

しかし、時の流れの中で、私たちがその味に出会わせていただいたBBJは、さまざまな事情から惜しまれつつも閉店されることとなりました。
「もう、このブルーベリージャムは作れなくなります」
そんなお話を聞いたとき、心の中にぽっかりと穴があいたような、言葉にできない寂しさが押し寄せました。
あの、やさしくて素朴で、自然の恵みを感じさせてくれた味が、もう誰の元にも届かなくなってしまうのだと思うと、どうしても諦めることができなかったのです。
「もしよければ…その畑を、私たちに引き継がせていただけませんか?」
思いきって、そんなお願いをさせていただきました。
家具づくりとはまったく異なる世界への一歩。
正直、不安もたくさんありました。それでも、「あの味を守りたい」「この土地で育まれてきた恵みを次の世代へとつなげたい」──そんな純粋な気持ちが、私たちの背中をぐっと押してくれたのです。
こうして、「家具屋が育てるブルーベリー畑」という少し不思議で、けれどあたたかな物語が静かに始まりました。
4.畑しごとは、想像以上の大仕事
譲り受けたブルーベリー畑は、山あいののどかで静かな場所に広がっていました。
聞こえるのは鳥のさえずりと、風に揺れる木々の音。
街の喧騒とはまるで別世界のような、ゆったりとした時間が流れている場所です。

この畑では、もともと農薬や化学肥料を一切使わない「自然農法」でブルーベリーが育てられてきました。
だからこそ、引き継いだ私たちもその想いを大切にしながら、できる限り自然に寄り添うかたちで畑に向き合っています。
とはいえ、初めての農作業は想像以上に過酷でした。
春になるとあっという間に草が伸び、背丈を超えるほどになることも。
夏は日差しの強さに肌が焼け、立ちっぱなしの作業で体中が悲鳴を上げます。
時にはイノシシやシカの獣害と戦いながら、自然との向き合いは、いつだって真剣勝負です。

けれど、そんな過程の中で、土の匂いや風の音、虫の声に耳を澄ませながら過ごす時間には、言葉にできない豊かさがあります。
汗をかきながら草を刈り、手で土を触り、一本一本の枝を見つめながら剪定をする。
花粉を運ぶ虫たちを発見し、「受粉を手伝ってくれてありがとう」と言葉をかける。
そうした手しごとの中に、自然と心が整っていくような感覚がありました。
そして何より、努力の先にある「実り」が、何にも代えがたい喜びを運んできてくれます。
青く固かった実が、少しずつ紫色に色づき、甘酸っぱい香りを放ち始めるあの瞬間。
ようやく報われたような、ほっとするような…。
その感覚は、まるで家具づくりで木材をひとつずつ磨き上げ、形にしていくときに感じる達成感と、どこか似ているのです。

5.スタッフが手しごとでつなぐ、丁寧な循環

初夏の訪れとともに、畑のブルーベリーがふっくらとふくらみ、青紫色の実をつけ始めます。
この季節になると、収穫作業に取りかかります。
朝露の残る涼しいうちから畑に入り、熟した実を見極めながら、ひと粒ひと粒を傷つけないようにやさしく摘み取っていく――その繰り返しです。
この収穫作業は、一見地道ですが、集中力と根気が求められます。
完熟したブルーベリーはとてもデリケートで、少しの力でも潰れてしまうため、力加減にも細心の注意を払います。
バケツに徐々に溜まっていく実の重みは、小さな達成感とともに、ひと夏の喜びを運んでくれるようです。

採れたてのブルーベリーはキレイに洗って、傷んだ実を取り除き、すぐにキッチンへ。
そこからは、また別の“手しごと”が始まります。
私たちのジャム作りに使う材料は、いたってシンプル。「ブルーベリー、還元麦芽糖、レモン果汁、リキュール 」の4つだけ。
保存料や香料、着色料などは一切使用せず、ブルーベリー本来の香りや酸味、甘みを活かすことにこだわっています。
煮詰め作業は、スタッフの感覚がすべて。
BBJのご主人に教わった通り、五感をフルに使って、「ちょうどいい瞬間」を見極めていくのです。
果実がしっとりとした艶を帯びてくる頃、キッチンの空気は甘酸っぱい香りで満たされ、自然と笑みがこぼれます。
「いいジャムができたね」そんなひと言を交わせる瞬間が、ものづくりの喜びでもあります。
できあがったジャムは、すぐに瓶詰めへ。
瓶を消毒し、ジャムをひとつずつ詰め、フタをしっかりと閉めてラベルを貼る――この工程もすべて手作業です。
家具と同じように、手間を惜しまない、手のぬくもりが伝わるものづくり。
私たちのジャムには、そんな想いがぎゅっと詰まっています。
6.暮らしに寄り添う、小さなギフト

私たちのジャムは、小さなギフトとしてもたくさんの方に選んでいただいています。
・母の日の「ありがとう」の気持ちに
・出産や退職のお祝いに
・お中元やお歳暮などのご挨拶に
・帰省の手土産に
自然のままの味わいに、ちょっとした気持ちをのせて届ける。
おしゃれすぎず、でも素朴すぎない。
ちょうどいい「やさしさ」が、ギフトに選ばれる理由なのかもしれません。
「食べてみたら、懐かしい味がした」「小さな幸せを感じました」
そんな声をいただくたび、畑での苦労がすべて報われるような気がします。
7.お客さまの声
ありがたいことに、購入されたお客様からレビューをいただいております。
その一部をご紹介します。
農薬不使用が嬉しい、甘さ控えめの美味しいジャム。米粉パンにぴったりです。
自然農法に惹かれて購入し、友人へのプレゼントに。
後日「粒がごろごろで甘さ控えめ、パンやアイスに合う!」と喜ばれました。
贈ってよかったです。
添加物不使用で安心。甘さと酸味のバランスが良く、ヨーグルトにもよく合います。
8.小さな実に宿る、自然のちから

ブルーベリーには、目の健康をサポートすると言われる「アントシアニン」が豊富に含まれています。
また、抗酸化作用のある成分や食物繊維、ビタミンCなども多く、美容や健康を意識する方にもぴったりです。
私たちのジャムは、そうしたブルーベリーの栄養をできるだけ壊さないよう、時間と温度を調整しながらじっくり丁寧に仕上げています。
ひとさじで、からだにも、心にもやさしいひとときをお届けできたら──そんな気持ちでジャムを作っています。
9.家具づくりと同じ「暮らしをつくる」もの

家具も、ジャムも、かたちは違えど、どちらも「暮らしの道具」であることに変わりはありません。
日々にそっと寄り添い、使う人の心と身体をやさしく支える存在でありたい──それが、私たちが大切にしている“ものづくり”の姿勢です。
丁寧に手をかけること。
時を重ねるほどに味わいが増し、自然と愛着が育っていくこと。
その思いは、木の家具にも、ブルーベリーのジャムにも、同じように込められています。
食べることは、生きること。
だからこそ、安心して口にできるものを届けたい。
無農薬・無化学肥料で育てたブルーベリーを、余計なものを加えずに煮詰める。
その過程には、自然の恵みと、人の手の温もりが重なっています。
家具づくりを通じて出会ったお客様が、ジャムの味を通して笑顔になってくださる。
あるいは、ジャムとの出会いをきっかけに、私たちの家具にも興味を持っていただける。
そんな小さなご縁のひとつひとつが、ここちよく、健やかな暮らしへとつながっていくと信じています。
人と人、道具と人、食と暮らし。
それらが自然につながり、毎日を少しずつ豊かにしていく。
私たちビッグモリーズは、そんな風景を思い描きながら、これからも“手しごと”に心を込めてまいります。
10.さいごに。

「家具屋が作ったジャムなんて、おもしろいね」
そんな風に笑っていただけることが、私たちにとって何よりのよろこびです。
手間ひまかけて育てた、無農薬・無化学肥料のブルーベリー。
その自然な甘さを大切に、丁寧にジャムに仕上げました。
ほんのひとさじが、日々の暮らしをちょっとだけやわらかくする。
誰かとの会話が弾んだり、ほっとひと息つけたり。
そんな小さな幸せをお届けできたら――
それが、ビッグモリーズの願いです。
ビッグモリーズのブルーベリージャムはこちら